『タイム・リメンバード』ビル・エヴァンス

『Time Remembered』Bill Evans
収録曲
- Danny Boy
- Like Someone In Love
- In Your Own Sweet Way
- Easy To Love
- Some Other Time
- Lover Man (Oh, Where Can You Be)
- Who Cares?
- What Is this Thing Called Love?
- How About You?
- Everything Happens to Me
- In A Sentimental Mood
- My Heart Stood Still
- Time Remembered
Personnel
Bill Evans (p)
録音:
1962年4月10日 (1.〜4).
1958年12月15日 (5.)
1963年5月30日 (6.〜9.)
1963年5月31日 (10.〜13.)
レーベル:Milestone
ディスクガイド
『Time Remembered』は1983年にMilestoneレーベルからリリースされたアルバムで、Bill Evansの未発表音源をまとめた1枚。初出当時は2枚組LPで、CD再発時には13曲編成に整理されています。
内容をざっくり言うと「ソロ+トリオ+ちょっと昔の音源」という寄せ集め構成。とはいえ、Bill Evansのキャリアの中で重要な時期にあたる1962〜63年の録音がまとまって聴けるのは貴重です。プロデューサーOrrin Keepnewsらしい編集眼といえるかもしれません。
6曲目以降は1963年、Shelly’s Manne-Holeでのライブ録音。同じセッションから編集された公式盤『At Shelly’s Manne-Hole』には入らなかったテイクをまとめたものです。ベースのChuck Israels、ドラムのLarry Bunkerとのトリオは安定感があり、ソロピアノとは一転してスウィンギーで明るい演奏も多く、ぐっと聴きやすくなります。
1〜4曲目は1962年に録られたソロピアノ。『Undercurrent』の少し前の時期で、深い内省に沈み込むような演奏が続きます。特に「Danny Boy」は10分以上も弾き続ける異色のテイク。テーマを何度も繰り返すうちに迷路のように入り込み、抜け出すのに10分かかった…そんな印象を受ける、不思議な魅力のある演奏です。美しいけれど決して“スリリングなジャズ”とは言えない。それでも、この沈んだ雰囲気に浸りたいときに思わず手が伸びる演奏です。
5曲目「Some Other Time」は1958年録音。『Everybody Digs Bill Evans』のタイミングです。時期も音質も他と違うのでちょっと浮いた存在ですが、これはこれで若き日のBill Evansの瑞々しいプレイが楽しめます。
初心者にオススメできる?
正直に言うと「最初の1枚」にはおすすめできません。未発表音源集という性質上、寄せ集め感が強く、まとまりも少し弱いからです。
ただし、ソロピアノでの深い世界に惹かれる人や、『At Shelly’s Manne-Hole』が気に入った人にとっては、さらに掘り下げる楽しみを与えてくれるアルバム。Bill Evansの“裏側”を知るような感覚で楽しめます。
Pick up!!
8.What Is this Thing Called Love?
Bill Evansの代表作『Portrait in Jazz』にも収録されている曲。こちらは1963年のライブ版で、テンポやアプローチの違いを聴き比べるのが面白いポイントです。
9.How About You?
ブロードウェイ・ミュージカル『Babes on Broadway』のナンバー。いわゆる「ジャズ・スタンダード」になった曲のひとつで、ここではオーソドックスな4ビートで気持ちよく展開されます。ライブらしいジャム感も心地よい仕上がり。